男はここで泣ける
どうやら、はやぶさは予定通りカプセルを分離したあと燃え尽き、中身がどうあれカプセルも無事着地地点が明確になったようですね。
日本人独特の桜散る or ハラキリの精神構造かどうかは知りませんが、正直感動しました。泣けます。燃え尽きてしまったはやぶさに一献献上しました。
物心ついた頃には既に月にウサギはおらず、大きな大砲で撃ち出すというような話は噴飯もので、多大なエネルギーを消費してやっと大気圏外に、というような現実がはっきりしていました。 とはいえ宇宙空間に放射能をばらまき散らす原子力ロケットや陽子エンジンなんてのは堂々とまかりとおっていたのですが、その頃から一貫して私を苛んでいたのは宇宙空間の過酷な環境と圧倒的な孤独。
2001年宇宙の旅から謎の円盤UFO、そして最近ではミッション・トゥ・マーズで宇宙空間でヘルメットシールドを敢えて自分で開いて、その瞬間に沸騰乾燥してしまうクルーなど、いわゆる「板一枚下は地獄」というなんともお尻の落ち着かない恐怖です。
衛星は酸素を必要とはしないものの、なんでも擬人化してしまう日本人は七年にも及ぶ孤独を思うと、長期の通信途絶と満身創痍のハードエラーを乗り越えて青い地球まで還ってきた非生命体に思わず「ゴースト」を確信せざるを得ません。
もちろん、この感動劇の真実は関係者の徹底的な計算と科学的試行錯誤に他なりません。 が、本来無機質であるものが、完成品となった途端に理解しがたい有機的 or 感情的な味わいを示すことは、例えば車では乗り味、パソコンでは相性や馴染みという論理式では証明しがたい結果を生み出すことに我々は気がついています。
そこに恐らく(多くは男性でしょうが)人は人以外のものへのコミュニケーションの可能性を見いだし、大げさに言うと愛情と感情の対象のゆらぎに戸惑うのかと思います。
文系論理で行くと、これは大気圏突入のタチコマ。
核ミサイルの弾幕代わりの宇宙衛星落下に自ら犠牲になって大気圏突入で燃え尽きる映像と、たった数十センチのカプセルを守るために七年間の旅の締めくくりを自己犠牲で終えてしまったはやぶさ。
毎日新聞の「なるほドリ」。 本来客観的であるはずのジャーナリズムさえ名文を残しています。(文中Qはなるほドリ、Aははやぶさを仮定)
> Q 7年間も一人で旅をして寂しくなかった?
>
> A 全然寂しくなかったよ。うすださん(長野県諏訪にある電波中継施設)たちに協力してもらいながら、ずっと管制室の研究者の人たちとお話をしていたからね。調子が悪くなると、直す方法を考えてくれたり、良くならない時にはそれ以上悪くならないよう気を配ってくれたり、別の解決法を考えてくれた。一緒に旅をしているみたいだったよ。
>
> Q 帰ってきたはやぶさ君に、直接「お疲れさま」って言いたいな。
>
> A ありがとう。でも、それはできないんだ。ぼくはカプセルを正確に落とすため、できるだけ地球に近づかないといけない。カプセルを切り離した後、大気圏に突入して燃え尽きてしまうんだ。ぼくは流れ星になるよ。 今、ぼくの目の前には真っ青な地球が見える。長旅でいろいろな星を見たけれど、やっぱりぼくの故郷が一番素晴らしい星だと思う。大変なこともいっぱいあったけれど、新しいことにたくさん挑戦できて、思い出がいっぱいできたよ。
泣けるんですよ、ほんとに止まらないほどに。 サイエンス万歳。
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